象牙(彫刻)の特徴・魅力
象牙は、その表面に独特の触覚があり、彫りやすいため、中国美術では彫刻の材料として使われてきました。象牙の付け根の部分は空洞になっているので花瓶や筆立に使われ、先端部は彫刻を施しミニチュアの置物などを作るのに適しています。材質的には強いですがタイルなどの硬い表面に落とすと割れてしまいます。象牙は簡単には燃えませんが、熱や乾燥に晒されると質が落ち、また油やしみを吸収しやすい性質があります。磨くと金色やこげ茶色のつやが出るので、この特質を美術品として活かしたものもあります。
象牙(彫刻)の歴史
象牙利用の始まりは新石器時代のマンモスの牙の使用にまで遡ります。象の牙が中国で本格的に使われるようになったのは明時代で、東南アジア、インド、北アフリカから材料としての象牙が入ってくるようになりました。最初は花瓶などの内張りとして使われていましたが16世紀になると、彫刻を施すようになりました。特に、フィリピンに在留していたスペイン人のキリスト教徒から宗教的な象牙彫刻の需要があったため、象牙彫刻の製造がすすみましたが、この影響を受け、今度は中国国内で道教や仏教の象牙彫刻の作品が作られるようになりました。18世紀になると広東を中心に象牙工芸が広がり象牙取引が盛んになりました。そして現在のように動物愛護の問題が問われるようになったのです。なお、中国では2017年に象牙の取引を禁じる法律を制定しています。
象牙(彫刻)の作品
静岡県伊東市にある「象牙と石の彫刻美術館ジュエルピア」は、桜葉の栽培加工技術者である山元芳光氏が中国で技術指導中に蒐集した象牙彫刻の作品を集めた美術館です。館内には中国象牙彫刻120点の他、翡翠彫刻などの作品が展示されています。展示されている作品の主なものとしては「天球」「龍神屋形船」「天神戦」などですが、その他にも「山水仙人天宮」や「九重の塔」など手の込んだ作品が並んでいます。この中でも天球は、象牙に彫刻を施した大きさの違う球をいくつも組み合わせ、しかもそれぞれの球が自由に動くようにアレンジしたもので技術的また美術的に高いものと評価されています。
象牙(彫刻)の価値と買い取り
象牙には偽物の「象牙」も多数出回っているため、しっかりとした鑑定が必要です。普通の人にもわかる本物と偽物の違いは、色と形です。本物の象牙の色は少し黄ばんだような色をしており、また色の配分も均一でないことが特徴です。形の面では、本物の象牙は上から見ると右か左に曲がっています。このような特徴がみられず、きれいすぎるくらいに白かったり、またまっすぐ過ぎる物は偽物だとみなされることが多いようです。それでも判断するにはやはり専門家の判断に任せた方が無難でしょう。また中国が取引を禁止していることから象牙彫刻作品の入手が困難になり、その分、値段が高騰しています。